【怖い話|人怖】降ろしてくれないタクシーの運転手

私は30代前半の女で、役所勤務の仕事をしております。これは幽霊といったお話ではないのですが、リアルにとても怖い体験をしたのでお話したいと思います。

深夜0時を回った頃、私はいつものように遅くまで役所仕事をしており、やっと家に帰れるところでした。基本的に朝から深夜まで働く日々が続いていたので、帰りはもう疲れきってヘトヘト。

本当は安いから電車で帰りたいのですが、残業続きで疲れきっており、ここしばらくは毎日タクシーばかリを利用していました。

その日も体力が残っていなかったのでいつものようにタクシー乗り場へ足を運びました。

私の勤務場所の近くのタクシー乗り場は、深夜でもタクシーを待っている人が多い時で4~5人はいたりするのですが、タクシーはいつも台数が足りないのか10分くらい待つことが多かったです。

しかしその日はタクシー乗り場を見てみると、ラッキーな事に一人も待っていませんでした。そして待機しているタクシーは一台だけ。

「よし!今日はタクシーにすぐ乗れる!」

そう思って歩いていたら、急に後ろから走ってくる足音がして、私を本当にタクシーの前ギリギリのところで追い越し、目の前に止まっていたタクシーにのってしまいました。

それを見た私はイラッとしました。「せっかくすぐに帰れる所だったのに・・・」

そうして次のタクシーを待っていたのですが、普段なら数分もすれば次のタクシーが来るのですが、その日に限っては中々来ません。

そうやって待つ事30分くらい経った頃でしょうか。待たされていた私は尚イライラしていました。「あぁ~、後一歩の所だったのに一気に帰るの遅くなったぁ・・・」

するとやっとの思いで向こうからタクシーがやって来ました。対向車線にいるタクシーは、黙っていてもきっとタクシー乗り場に人が立っているのを見てUターンしてきますが、その日は絶対にもうタクシーを逃したくなかったので、私は手を振りアピールしました。

そうしてやっとタクシーに乗れ、私は運転手さんに行き先を告げました。

「元あった〇〇設備工場前までお願いします」っと。

そこは1年くらいまえに閉鎖された工場ですが、建物自体はそのまま残っていました。

私の家は少し入り組んだ場所にあって、近道を通ると家の付近では一度、ぐるっと車が大きく外周を回らないと家の前には着かない道になっています。

なので車では近道を通ってもらい、その今はもう人がいない〇〇設備工場前にいつもタクシーをとめ、2分くらい歩いた方が家までは早いのでいつもそうしていました。

(タクシー代も少し浮く)その日もいつも通りの行き先を告げたのですが、タクシーが走り出して数分が経った頃、突然運転手の方が私にこう話しかけてきました。

「お客さん、もしかして2~3日前も〇〇設備工場前までタクシー乗りませんでしたか?」っと。

女性の立場からすれば、急にタクシーの運転手にそんな事言われたら少し怖くなります。ストーカーとか意外とあるじゃないですか。だから私は

「あっ、どうだったかな?覚えていないです」と嘘をつきました。

その後タクシーの運転手は「あれぇ?そうですかぁ?」と返してきた後、さらにしつこく「本当に違います?」と再度聞いてきたので私はさらに怖くなり「違います!」と突っぱねました。

私:「(・・・なんなんだこの人。本当に怖い。早く家に着いて!)」

そう心の中で思っていると、やっとタクシーは〇〇設備工場前の所に来ました。私は「やっと車から出られる」っと思い、普段はあまり使わないのですが、その時は1秒でも早く車から出たかったのでおつりのやり取りもいらないスマホ決済をしようと、スマホを準備していました。

するとタクシーの運転手の方は〇〇設備工場前がもう目の前という所で、停止するどころか急に少しアクセルを踏み〇〇設備工場前を通り過ぎてしまいました。

私「えっ!あそこですよ、もう止まって下さい。」っと焦って運転手に言いましたが、私の話をなぜか一切聞かず、そのままタクシーは走り続けました。

運転手は私の方を見る事もなく、バックミラー越しに運転手の顔を見ても前だけを向いて口を閉ざしています。

私はさらに怖くなり、再度「運転手さん、もう止まって下さい!」と強く言いました。

するとその運転手は低い小さめの声で「大丈夫」と私に言いました。

「全然大丈夫じゃないから!この人絶対おかしい」っと思い、私は全身が恐怖に包まれ、このまま何処か山の中にでも連れ去られるのだろうか、そう考えました。とにかく怖い。逃げ出さなきゃ。でも体が動かない・・・

そうして3分ほどでしょうか。タクシーは走り続けた後急に交番の前の駐車場に入り、そこへ車を止めました。

「えっ?どういう事???」

交番が目の前にあるので一瞬安心した部分はありましたが、同時に「私何も悪い事してないよ?え?私つき出されるの?」といった思いもあり、もう訳がわからなくなりました。

するとタクシーの運転手の方はゆっくりと後ろを振り返り、私に向かってこう言いました。


お客さん、いつもタクシーで帰ってるよね?私何度かあなたを乗せた事があるんです。つい先日も乗せたのでハッキリと覚えています。行き先だって覚えていたくらいですから。

それでね、さっきお客さんを乗せる直前に、あなたの後ろから走ってきた一人の男性をタクシーに乗せました。

あなたの顔に見覚えがありましたから、タクシーに乗るんだろうなと少し前から気付いて思っていましたが、急に男性が後ろから来て先を越されたのを見て可哀そうにと思っていました。

もしあの時あなたがきちんとタクシー乗り場についていたら私の方からも一言言えたのですが、まだタクシー乗り場の少し手前にあなたはいたのでその時は何も言えませんでした。

そしてその男性が告げた行き先は「〇〇設備工場前」だったんです。

その男性はタクシーに乗って数十mほど走ってから、急に何度も後ろを見て気にしていました。

どこを見ているのかバックミラー越しにその男性の視線を追ったら、その先には後ろでタクシーを待っているあなたしかいなかったのです。そして男性はスマホを取り出し、誰かと電話を始めたのですが、そこではこのように言っていました。

男性:「今タクシーにのった。女後ろでタクシー待ってる。うん、たぶんすぐ来ると思う」

こんな深夜の状況でそんなのを聞いたらだれだって嫌な感じはしますが、私はただの運転手ですし余計な口をはさむなんて事は出来ませんから、ただ男性を送り届ける事しか出来ませんでした。

そうして男性を〇〇設備工場前で降ろした後、あそこって道が入り組んでいるじゃないですか。

だから大きく外周を回って再度タクシー乗り場に戻ろうとした時、私はもう一度〇〇設備工場前を通ったのですが、ヘッドライトが〇〇設備工場前に当たったと思ったらそこにいた男性3人組が急にササッと物陰に隠れたのが見えました。

さっきの電話の内容といい、どんないきさつかはしりませんが男3人組はあなたを狙っているのは明らかでした。

ですが私には何もする事が出来ず、タクシー乗り場に戻ってもきっとあなたはすでにタクシーに乗って〇〇設備工場前に向かっているんだろうなと思っていました。

しかし付いてみるとこれは偶然なのか、なんとあなたはまだタクシーに乗れておらず、そのまま私が乗せる事になったのです。

そして後はご覧の通り今に至ります。私は変な気は一切ありません。だから近くの交番に車を止めました。私を不審者だと思うのならこのまま交番に突き出してください。


タクシーの運転手の方はまっすぐ私を見てそう言いました。その後運転手の方にお願いして私の家の前まで送ってもらい、何度も何度もお礼を言いました。

あの時少しでも早く別のタクシーが来ていたら私はどうなっていたんだろう。そう考えるとゾッとします。

追伸

私はその男性達に一切心当たりがありません。そして人から恨まれるような事もしていないつもりです。しかしそんな事があってからは、今では帰りが遅くなった時はかならずタクシーで家の前まで送ってもらうようにしています。

そしてあの時、〇〇設備工場前で降りていたら私はどんな目にあっていたのか・・・今思っても本当に怖い体験でした。

 



洒落怖くん洒落怖くん

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