【実話の怖い話】学習する霊

これは俺が20才くらいの時の体験談です。

当時まだ若いという事もあって給料が安く、都内で一人で部屋を借りるなんて事は出来ませんでした。そして当時仲が良い友人二人がいたのですが、3人でよくつるんで遊ぶ事が多かったんですね。

そんなある日俺は、友人二人に思い切ってある提案をしました。それはシェアハウスです。

友人二人も当時実家暮らしだったのですが、みんな考える事は一緒のようで、3人はその後共同で部屋を借りる事になりました。

 

ただそれでもそこまで家賃に費やすほどのお金は無かったので、3部屋あってとにかく安い物件を探していました。

最初は「中々ないよねぇ~」なんて話していたのですが、色んな不動産屋に根気よくそれぞれ足を運んでいたのですが、ある日3人の内二人、A男とB男は見事格安物件を探してきてくれたのでした。

そこは築35年くらいの一軒家で、家賃はなんと10万円。

間取りはちょっと特殊な感じはしたのですが、都内のはずれの方といってもその価格ならとても安いので「ここいいじゃん!ここにしよう!」と満場一致でその物件に即決める事になりました。

俺は一階の居間の隣にある部屋に住み、A男とB男は2階のそれぞれの部屋に住むことになりました。

そうしてその家に3人で住んでからは、毎日のように夜3人で一階の居間に集まり酒を飲みながら語りあかす日々が続きました。

「本当に安いよなここ!事故物件で幽霊とか出たりして笑」なんて冗談も良く出ましたが、若い頃は勢いがありますから「俺まったく霊感ないから余裕。」「あっおれもおれも」なんて調子でした。

友人の内の一人であるA男はとにかくイケメンで、3人の中でも特に女性からモテていたんですが、その時は付き合いだしたC子という子に夢中になっていました。

 

お酒を飲むと大体一度はC子の話になるのですが、そのC子も本当に可愛く、俺もB男も「ほんとC子ちゃん可愛いよなぁ。今度友達紹介してよぉ~」なんていつも言っていました。

そうして引っ越して1週間くらい経った頃でしょうか。

いつものように居間に集まって3人でお酒を飲んでいたのですが、ぺちゃくちゃお喋りしている時、急に3人が一斉に話すのを辞め、フッと部屋の片隅に視線が奪われる。そんな出来事がありました。

どうしてそこを向いたのかは自分でもわかりません。

そして「なんで今お前らもそこ見た?」って聞いても、後の二人も俺とまったく同じで「えっ、わからん。ってかお前は?」といった感じ。

 

誰も説明のしようがなかったのですが、その日以来その居間の片隅から嫌な雰囲気を度々感じるようになりました。

夜トイレに行くとき、俺の部屋から一度居間に出て扉を開けた先にトイレがあるのですが、その扉を開ける時にその居間の片隅からすごい視線を感じたり、ある時は仕事に行く時、部屋から出て居間に入った瞬間片隅に一瞬黒いモヤが見えたりと。

そんな日が続いていたある日、A男が夜いつもの調子で3人で語っていた時、おもむろにこんな事を言い出しました。

A男「俺最近金縛りにあうんだよね・・大体週2~3回くらい?」っと。

俺とB男はそれを聞いてちょっと気味が悪くなってきたのですが、実は俺も数日前、一度夜寝ている時に金縛りにあったことがありました。

寝ている時に頭の方に黒いモヤを感じ、なにやらその黒いモヤは俺の顔を覗き込むようにしてゴニョゴニョ喋っている。そして少しするとその黒いモヤは部屋から出ていったという出来事がありました。

俺の場合はその一度だけで、B男は何も起きていないようでした。

 

そしてA男から金縛りの件を聞いた時、俺は今ここで自分も金縛りにあったといったら、二人は怖がって家から出ていくって事にもなりかねないと思い、連日居間の隅から視線を感じたりしていた事なども含め、自分の体験は黙っておくことにしました。

 

そしてそんなある日、A男の彼女のC子が友達二人を連れて家に遊びに来る事がありました。

その時C子は飼っているチワワを連れて来たのですが、部屋に入るなりそのチワワは部屋の隅の方を見た途端物凄い剣幕で吠え出した事がありました。

A男とC子いわく、その犬は普段絶対に吠える事はなく、本当におりこうさんだから連れてきても大丈夫っしょ的な感じだったのですが、あまりにも吠えるのでとても焦っていました。

どんなになだめてもその犬は居間の隅の方を見てずっと吠えており、今にも飛び掛かりそうな勢いだったのを覚えています。

 

何をやっても吠えるのをやめないので、せっかく遊びに来たのにこれじゃダメだってなり、6人は一旦C子の家に犬を置いていき、その後カラオケに行く事にしました。

そうして1ケ月くらい経った頃、仕事が忙しくなったという事もあり、最近は三人とも顔を合わせない日も目立っていきました。

 

ある朝出勤の準備をしてたら、たまたまA男とすれ違う事があり「あっ、おはよ~」と声をかけたら、A男は物凄いゲッソリとした顔で「おっ・・おう・・」と返してきました。

あまりにもゲッソリとして生気がない感じだったので「お前大丈夫か!?」と声をかけましたが「うん、大丈夫・・・」で終わりました。

少し心配になりましたが、「仕事忙しいのかな?」程度。その時特に気にはとめませんでした。

そしてそこからさらに数日が経った頃、たまたま3人が夜揃ったので、久しぶりに3人で飲むかという事になり、居間で飲むことにしました。

その時もA男は顔がゲッソリしていました。

そして席に着き、俺がビールを一口飲んだ後、A男はお酒に手を伸ばす前に、急にこう語り始めました。

 

A男「俺、最近幽霊見るんだよね・・・あれは気のせいじゃない。そりゃ最初は気のせいだと自分に言い聞かせたけど、絶対に気のせいじゃないんだよ。」

「前さ、金縛りにあうって言った事あったよね。あれさ、最初は寝ている時、急に金縛りになったと思っても、数分したらすぐに金縛りが解けていたんだよ。

でもさ、その内金縛りになったと同時に人の気配がするようになってさ。そしてその内段々とその気配が俺の近くにくるようになってきてさ。」

 

「2週間くらい前から人のような気配は俺に何か話しかけるようになってきたんだよ。俺もう怖くてさ、絶対に目はあけないようにしてるんだけど、最近は耳元で何かささやいてくるんだよ。」

「最初はゴニョゴニョゴニョゴニョって全然聞き取れなくてさ。んで昨日もさ、金縛りにあったんだけど、その時もまた人の気配が寝ている俺に近づいてきたんだよ。

 

そしてその時初めて聞き取れたんだけど、その幽霊みたいなのがなんて言ったと思う?」

 

「C子だよ。C子だよ。C子だよ。って言ってひたすら繰り返すんだよ。」(C子はA男の彼女)

 

「声が女性のような甲高い声をしていたけど、明らかにC子の声じゃないから、これは絶対目をあけちゃダメだ!って思い、耐え忍んでいたら何とか金縛りは解けてそいつはいなくなったんだけどさ。ごめん、俺もう限界かもしれない・・・」

A男はゲッソリとした顔でそう話してくれた。

そうしてそこから1週間も経たないで、A男はその家から出て行く事になった。A男の顔はそれはもう悲惨で、一気に20才くらい老けたように見えた。

部屋を3人で借りたばっかだったけど俺もB男もA男を一切せめる事は出来なかった。

その後は別の友人が入れ替わりで一緒に暮らす事になり何とかシェアハウスは維持する事が出来た。

その後はというと、俺もたまーに部屋の隅から視線を感じたり、一瞬女の人のような気配を感じたり、「えっ、今そこに女いたよね?」って一瞬見えたりってのは何度かあったが、それもほんとたまーにだった。

そこまで怖くもなかったから、なんだかんだいってそこから3年くらいは住んでいた。

そしてこれは後から考えて自分で納得した事ではあるのだが、まず最初に一つ俺の中で確定している事は、あの家には女の幽霊はいたと思う。(たまに見たから)

そしてあの家にいた女の幽霊は、A男の事を気に入ったんだと思う。

最初はA男も「何を喋っているかわからないけどゴニョゴニョ話しかけてくる」と言っていた。そして一度も目を開ける事もなく日々無視し続けていたから、幽霊もかまって欲しかったんじゃないだろうか。

あの頃俺たち3人は当時A男が付き合ってたC子の事をよく喋っていたから、それを聞いて女の霊は「C子だよ。C子だよ。」って言えばA男がかまってくれると思ったんじゃないかな。

幽霊も学習するのかもしれない。

これが俺が実際に体験した怖い話であり、実話です。



洒落怖くん洒落怖くん

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