これは二十歳の頃、バイト先がキッカケで私の身に降りかかったとある事件のお話です。
その時は居酒屋でバイトをしていたんですが、帰りが遅くなった時は足が無いので、店長がタクシー代をくれるからタクシーで帰る事がたまにありました。
そんなある日、またバイトで遅くなった日に同じバイト先の30歳くらいの調理担当の男性が「俺家近くだから乗せてくよ」っと私の顔を見もせずそう言ってくれました。
その男性とは普段一切話す事はないのですが、決して悪い人という感じではなく、人付き合いが苦手なタイプのような人でした。
私は声をかけられた時一瞬身構えましたが、「まぁ同じ職場だしこの人ならきっと無害だしいっか」という軽いノリで自宅まで送ってもらう事にしました。
帰り車の中でもその男性は見事に無言で、一言も会話が無かったので凄く気まずかったのを覚えています。
そしてその翌日。バイトの休憩中にその男性と二人っきりになる事があったのですが、その男性は食事中の私に向かっていきなり「結婚しようよ」っと言ってきました。
普段冗談を言い合うような仲なら軽いノリで返せるのですが、その人とは本当にほとんど話したことがなく、前の日自宅まで送ってもらった時でさえ最後の「ありがとうございました」まで一言も会話が無かったのです。
ですから私は真顔で「えっ?」っと困り果てたような顔をして、その場はそれっきりでした。
そして私のその辺の記憶はそこまで。
その後目が覚めたらイスに座らせられた状態でロープで体を縛られていて、何とも言えないジメっとした変な匂いがする誰かの部屋の中に閉じ込められていました。口もガムテープで塞がれているので何も話せません。
その状態の中30分くらいでしょうか。その内そのバイト先の男性が部屋に入ってきて「結婚しようよ」っとまた言ってきました。
その時私は「こいつは異常者で私はさらわれたんだ」と気づきました。首を横に振ると男性は露骨に面白くない顔をしながら一階に降りていきました。
その後すぐに下から誰かの軽い悲鳴と一緒に、部屋の中で誰かが暴れているようなガシャン!ガシャン!っという音が響き渡り、私はとてつもない恐怖と混乱に襲われました。
その激しい物音が止むと、やがて誰かがまた部屋に向かって階段を上ってくる足音が聞こえました。
私の部屋の扉を開けるとそこには一人の年配の女性が立っており、部屋に入るなり素早い動作で私の前に膝をつき、そのまま勢いよく私の両肩を手でつかみながら
「〇〇(バイト先の男の下の名前と思われる)と
結婚しろ!結婚しろ!結婚しろ!」
とすごい剣幕で迫ってきました。
もう訳がわからず、私はただ泣く事しかできませんでした。
それからおぞましい事に、強制的に私とそのバイト先の男と、その男の母親と思われる3人の生活が始まりました。
午後から深夜にかけてはその男がバイトにいっているのかいなく、その母親が私の風呂やトイレ、食事の世話をしていました。
食事の時以外は口にガムテープがされているのですが、食事の時にガムテープを取ってもらって口が開いた時は「助けて下さい、お願いします。誰にも言いませんので逃がしてください」っと懇願しても、その母親らしき女は一切聞く耳を持たず、食べさせようとしていた食事を私の横の地面に投げつけ
「うるさい黙ってろ!〇〇と結婚しろ!結婚しろ!」
っと始まります。
もう顔は完全にイカれていて、明らかに普通の精神状態ではありません。
あまり感情を逆なでするような事を言うと何されるか分からないので、それから私はただただおとなしくしている事しか出来ませんでした。
その後も毎日夜中になると私を連れ去った男が部屋にやってきて、ただこっちを見つめて「結婚しろ」っと言ってきます。
私は当然断ると、また露骨に面白くない顔をして一階に降りていき、きっとあれは母親に暴力を振るっていて部屋で暴れていたんでしょう。
そして私とその男を結婚させろって母親に言っていたんでしょうか。そんなのが続きました。
そんな日が1週間くらい続いた頃でしょうか。その日男は部屋に入るなり、椅子に縛られている私に急に襲い掛かり、服を脱がせて行為に及ぼうとしてきました。口を塞いでいるガムテープを剥がし、強引にキスをしてきました。
完全に身動きが取れない状態で抵抗する事も出来ませんから、私はとっさに「その気はある」といった好意的な感情を勇気を振り絞りながら出し、そして男に「来月誕生日だからその日にしたい」っと言いました。
もうあの一瞬でやり過ごすにはそれしかなかったんです。拒否すると母親みたいに暴力を振るわれるのかという恐怖がありましたので・・・
すると男は少し私を見つめながら、ほんの数ミリ口角があがったのを私は見逃さず、男はただ一言「わかった」っと言い、また私の口をガムテープで塞いだ後部屋を出ていきました。
その1時間くらい経ってからでしょうか。母親が部屋に来て「やっと結婚する気になったのね~」っとご機嫌でした。
私はそれに合わせるかのように、目だけで笑顔を作りながら首を縦にゆっくりと振りました。恐怖のあまり私の目元は震えて引きつっていたと思います。
でもそんな事まで異常者には見抜けなかったのか、母親はそれを素直に信じていました。
その後食事の度に私は結婚するつもりでいるという雰囲気を少しずつ母親にアピールし続けたおかげで、その男がいない時の母親の私に対するガードは徐々に甘くなっていきました。
ある日は「私が食事を作ります」っと言うと、最初はかなり渋られたが最終的に食事を私が作る日も出てきました。
ごはんを作っている時手に持った包丁を武器に、何度も逃げ出そうかと考えましたが、本音を言えばあまりにも怖くて怖くて、そんな勇気も出ませんでした。
そんな事をすれば間違いなく母親は逆上して、包丁を持った私に襲い掛かってきます。(これは絶対です。そういう顔をしているんです。)
よって私が逃げ出す姿勢を見せる=母親を刺し殺すつもりじゃないと逃げられないと考えましたが、恐怖で支配されている中、人を刺し殺す勇気は出ませんでした。
そんな日がさらに数日続いた後、母親のガードも徐々に緩くなり、私が食事を作っている時に母親はトイレに行きました。
もう私は今しかないと思い、逃げ出せるか確認する為、居間の扉はガラスベースの扉になっているので(もう割れてめちゃくちゃになっているが)
その隙間から玄関の横にあるトイレのドアを確認し、トイレの扉が開いていない事を確認して素早くソーッと物音を立てないように玄関の扉に手をかけました。
その瞬間靴も履かずに(っというか私の靴はなかった)扉を開けた瞬間全力でとにかく私は走りました。
するとほんのわずか数秒立っただけで物凄い勢いで奇声を上げながら後ろから母親が追いかけてきました。私はただただ必死に全力で逃げ、出来るだけ何度もこまめに道を曲がってあのイカれた母親を巻くように走り続けました。
そうしてやがて見えてきたコンビニの中へ扉を壊してしまいそうなくらいの勢いで飛び込み、そこで会計をしていた一人の男性とレジ打ちしている男性に「お願いです、助けてください!すぐに警察よんでください」っと言い、その後来た警察に保護され私は無事家に帰る事が出来ました。
そしてその後すぐにその母親と息子は逮捕されました。
後日談
私がどうして連れ去られた記憶が無かったのか、後から警察の方の事情聴取で明らかになりました。
どうやら一回目にその男性に家まで送ってもらった翌日、私は再度男性に家まで送ってもらったようです。(これはバイト先の証言)
そして犯人の自白なのですが、助手席のエアコンから空気が出る口の所に液体の強い麻酔のような物(ここでは伏せさせていただきます)を置いて、私の顔に直接当たるように角度をあらかじめ調整しておき、そうして眠らせたそうです。
どうして運転している男性が眠らなかったのかというと、マスクを2重にして運転席の窓は少し開けていたとか。完全に計画的犯行だったとの事。
普通麻酔のような強いなにかで人を眠らせるのはそれでは無理だが、バイト先から家まで車で30分弱はあったので、私はやがてそのまま眠らされたようです。
とてもおぞましい私の恐怖体験でした。こういう事って身近に起こりえるので、女性の方は本当に気を付けてください。
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