これは私が昔体調を崩して病院で入院していた時の怖い体験です。
私は当時プログラマーの仕事をしていました。
プログラマーと言えば基本的にブラックな職場が多いです。私が働いている所も例外ではありませんでした。
職場の人間も性格が根暗な人が多く、長時間労働・上手く行かない人間関係で体調をくずしてしまい、ある日私は検査入院という形でしばらく入院する事になりました。
うつ病とまではいかなかったのですが、その時の私は本当に疲れ切っていて、性格もどんどんと卑屈にもなっていってました。
他人のやる事にはイチイチ心の中で文句をつけたり、テレビを見ていても何かにつけて反論的な思考を持ち、とてもネガティブになっていました。
そんな自分にも嫌気がさしており、いつもいつも「今の自分は自分じゃない」って思ってはいるものの、つい気を緩めば嫌な性格の自分が顔を出しています。
そんな自分がとても嫌いな時期でした。
病院生活はとてもつまらないものでした。
食事は美味しくないし、テレビを見ても全然楽しめないほど気分も落ち込んでいる。
たまに同室の別の人に見舞いにくる家族を見ては「うるさいな。静かにしてくれよ」って思う程。
私は独身で友人もいなく、それが余計に気に障っていたのでしょう。
そんな時、新しく同室に入院してくる人が現れました。
彼はとても気さくな人で、誰にでも優しく、私にもいつも積極的に話しかけてきました。
その都度心の中では「なんなんだよこの人。何がそんなに楽しいんだよ。うざいからほっといてくれよ」って思っていました。
その人の名前は仮にKさんとしておきます。
Kさんは本当に明るく優しくて、毎日のように見舞いにくる家族とも仲が良く、家族みんなも常に笑顔で、いかにも幸せそうな家族って感じでした。
Kさんは自営業をしているそうなのですが、仕事とプライベート共に充実しているそんなKさんを見て、私はとにかく嫉妬していました。
(俺だって仕事頑張ってんだよ。なのになんでこんなに上手く行かないんだ。何が悪いんだよ。クソッ。自営業っていったってどうせ悪どい事して稼いでんだろ。)
本当に自分が嫌いでした。
そんなある日、またKさんが私に話かけてきました。
K「Aさん(私の名前)はお仕事何されてるんですか?」
私「プログラマーをしております。」
K「プログラマーなんてすごいですね!私なんて中卒だからそういうのはサッパリですよハハハ」
そんな調子で少し長々と会話をしていて分かったのですが、Kさんは本当に素直な性格をしており、私とは対照的で、太陽のような真っ直ぐな人だというのが徐々に分かってきました。
私の体の事を気遣ってくれたり、ブラックな会社で使われて疲弊している事を私によりそって親身に聞いてくれたりと。
こんなにも素晴らしい人を私は心の中でけなしたり、勝手に「悪どい事して稼いでいる」なんて決めつけていた自分を本当に恥ずかしく思いました。
心の中がまるでプレス機に挟まれたかのようにギューーっとなっていくのを感じました。
すると自然と私の目からは涙がこぼれていました。
K「どっ、どうしたんですか!?大丈夫ですか?」
私「すいません・・・すいません・・・」
K「何かあったんですか?私で良ければ相談にのりますよ。」
そこで私は自分の事を正直にKさんに話しました。
仕事やその他含めて何をやっても上手く行かない事。
自分の心が醜くなっている事。
心の中で勝手にKさんの事を決めつけ、悪者にしている事。
何に対しても卑屈的思考になっている事、全部正直に話しました。
話を聞いている時にKさんは、ずっと私の目を真っすぐと見つめ真剣に聞いてくれました。
こんな話をしたら嫌われて当然です。
K「正直に話してくれてありがとうございます。私も正直に話しますね。」
私「・・・(下を向いたまま厳しい言葉を浴びせられる覚悟をしていた)」
K「私にもまったく同じ経験があります。」
私「Kさんが!?そんな事・・・私に合わせて嘘はやめてください。」
K「決して嘘ではありません。私も会社を立ち上げた当初はまったく仕事が上手く行かず、本当に同じように卑屈になっていた時期があったんです。
知人の社長は法に触れるような事をして稼いでいる。その反面馬鹿正直の私は何をやっても上手く行かず、自分の心がどんどんと削られていき、いつもネガティブな感情に支配されるようになっていました。
そんなまったく同じような時があったんです。
でもねAさん。だからと言って進む事を辞める理由にはならないんです。真面目に、そして自分の気持ちに正直に向きあい、まっすぐ進んでいたら絶対良い事だってあります。
自分の事を許してあげて下さい。」
Kさんはそのような話を私に話してくれ、さらに私は泣き崩れてしまいました。
「私はなんて愚かな人間なんだ。こんなにも素晴らしい人を心の中で勝手にけなし、批判・否定していた自分が本当に愚かだ。」
そんな事があった翌日から、私は少しずつ変わっていきました。
本来の自分を少しずつ取り戻していきました。
楽しい話をしている時は素直に笑顔で笑える様にもなっていきました。
Kさん。本当にありがとう。
そしてそこから1週間位した頃でしょうか。
前の日まで至って普通に元気だったKさんが突然他界されました。
あまりに急な出来事に気が動転し、とてもじゃないけど最初は信じられませんでした。
毎日のようにお見舞いに来ていた奥さんと、まだ5歳くらいの息子さんを廊下で偶然見かけた時、泣き崩れてそれはもう悲惨な状況でした。
私は目に涙を浮かべながら、あまりにも悲惨なその光景に家族に声をかける事すらできませんでした。
「どうしてあんなに素晴らしい人が・・・まだ小さいお子さんだっているのに・・・」
そんな事があった夜。
いつもの様に病室で寝ていると、カーテンの奥からなにやら人の気配がする事に気付きました。
最初は看護師さんだと思っていたのですが、数分立ってもその気配が消える事は無く、徐々に何かがおかしい事に気付き始めました。
おそるおそるカーテンを少しめくり、気配がする方へ目を向けた時、私の体には心臓が飛び跳ねる位の衝撃が走りました。
カーテンの先にある向かいのベッド。
先日までKさんが使っていたベッドの横に、こちら側を見つめて立っているKさんの姿がそこにはあったからです。
Kさんは全身が赤いオーラのようなものに包まれている姿をしていました。
まだ心の中ではKさんが無くなった事実を受け入れられていない部分もあったのでしょう。驚いたと同時に、「Kさんは生きていたのか?」なんて事も頭をよぎったくらいです。
しかしすぐに自分を取り戻しました。
今目の前に立っているKさんは、死んでも死にきれないKさんの霊なのだと。
考えたら無理もありません。仕事もやっと軌道に乗ってきて、まだ5歳という幼い子供がいて、さぁこれからだ!って時に死ぬなんて、未練が無い訳が無いんです。
「そうだよなぁ・・・悲しいよなぁ、悔しいよなぁ・・・」
本当に切ない気持ちでKさんの顔を見ていると、どうやら目の前にいるKさんの霊はブツブツと何かを言っている事に気づきました。
Kさんの口元は、まるで動画の映像を早送りしているみたいに信じられないスピードで動いており、口元からは何を話しているのか読み解く事は出来ませんでした。
しかしブツブツと明らかに何かをこちらに向けて言っている。
「何を伝えようとしているんだ・・・家族に何か伝えて欲しい事でもあるのかもしれない。だから私の前に現れたんだ」
そう思い、私はKさんが何を伝えようとしているのか必死に耳を傾けました。
K「・・・・・・ば・・・・・に」
少し聞き取れて来た。
K「・・え・・・・よ・・・・に」
もう少し。
私はしっかりと家族に伝えようという使命感から、必死に聞き取る事に集中しました。
絶対に聞き逃してはいけない。Kさんの最後の言葉を家族に伝えるんだ。これは自分を取り戻すキッカケをくれた、俺なりのKさんへの恩返しだ。
そうして集中してKさんの言葉に耳を傾けていると、やがてハッキリとその言葉が聞こえて来ました。
K「・ま・が・・ば・・・・・」
K「・・え・・・・よ・・た・に」
K「お・え・・・・よ・・たのに」
K「お前が死ねば良かったのにお前が死ねば良かったのにお前が死ねば良かったのに」
最初は聞き間違いかと思いました。Kさんがそんな事を言うなんてという頭があったからです。
しかし3回連続で聞き取れた時、私は聞き間違いでは無い事を確信し、同時にその瞬間気を失ってしまいました。
翌朝、私はいつもの病室のベッドの上で静かに目を覚ましました。
昨日の夜の事を考えると、胸が苦しくなりました。
Kさんの立場になって考えたら無理もありません。
本当に悲しかったのでしょう。
本当につらかったのでしょう。
本当に無念でならなかったのでしょう。
家族やこれからの未来の事を考えたら、残念でなりません。
そして私は静かにベッドから体を起こし、こう思いながら朝食を頬張りました。
ざまぁねぇな!黙ってあの世に行ってろ!
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つまんな
そう?
そんなことないで
これはシンプルにつまらん話
1週間徹夜した後に見てみろ、「…はは」ってなるぞ
前提が鬼畜
くだらな
つまんなっていうくらいならコメントすんな
サイト見んな
それーな
つまんなくないけど、ちょっと特殊なジャンルだった。
最後の「ざまぁねぇな」がサッパリしてて好き。
確かに良かった。
俺も好き