冬に登山に行った時の恐怖体験

冬に仲間と3人で登山に行った時の話をしたいと思います。

俺たち3人は大学時代からの付き合いで、もう10年以上の付き合いになる。

とにかく登山が好きで、最近は行かなくなったがその頃は冬の登山が一番気に入っていた。

その時は海外のとある山に冬の登山にった。(誰もが知る有名な山)

天気は快晴で非常に気持ちのいいものだった。

友人のFとEと三人で順調に山を登っていたが、ずっと歩き続けるのは危険なので、時折休憩も挟んでいた。

空を見ると、ほんの数分前は快晴だったのに、薄っすらと雲が出てきている。

E「ちょっとお前ら休んでて。俺写真撮ってくるわ」

Eはそういうと、一人で遠く離れて行った。

あたりは真っ白な白銀の世界。

F「あんま遠くに行くなよ。クレバスマジでやべーから」

(クレバスとは、雪上に広がる裂け目のようなもの。)

Eは一人で少し見晴らしの良い場所を探しているのか、遠く歩いて進んでいった。

F「あいつあんな遠くに行って大丈夫かよ」

気付けばEは米粒サイズくらいに小さくなっている。

しばらくすると、良いスポットが決まったのか、Eはそこからしばらく動かなくなった。

そこから10分くらい経っただろうか。俺たちがそろそろ行くかという流れになり、Eに向かって「おーーーい!そろそろ行くぞ!」っと大声で声をかけた。

ただ、声が届いていないのか、Eは横を向いたまま、いつしかカメラも構えずに黙って前を見て立っているように見えた。

そして気付けばうっすらと雪が降って来た。

(山の天気はほんの数分で変わったりする危険な所なのです)

F「あいつ何してんだ?」

そう言うとFは持っていた双眼鏡でEを見た。

俺「Eなにしてんだ?」

そうFに問いかけても、少しFは黙っていた。

俺「おい?Eなにしてんだ?」

少しの沈黙の後、Fは声にならない声を発しだした。

F「あっ、あっ・・・・・・・えっ?」

その様子を見て俺も気になったので、自分の双眼鏡でEを見てみる事にした。

双眼鏡でEを見ると、そこには信じられない光景があった。

Eはこちら側からは横向きに映っており、双眼鏡で見ると彼は自分の足元の少し先を見ている感じというのだろうか、視線が下向き気味だった。

そしてそのEを後ろから覆うように、髪の長い真っ白な服を来た女性が、Eに向かって何かを話しかけているようだった。

薄っすらと雪が降っているし、辺りは真っ白な冬の山。

そんな中真っ白な格好をしているから肉眼では捉えられなかったのかもしれない。

しかし問題はそこじゃない。

その女の服装は、明らかに夏に外を歩くような、ただのワンピースなのだ。

そのありえない光景に俺もまたFのように、声にならない声を発していた。

俺「あっ、あっ・・・」

F「あ、あれ・・・女だよな?」

俺「だ、だよな・・・?」

双眼鏡でよくよく見ると、その女はEの耳元で何かを囁いているようだった。

そしてEは少し口元だけ口角が上がって不自然な笑みを浮かべながら、少し先の地面を見つめながら口がパクパクと動いている。

あれは会話してたんじゃない。状況を考えたら会話している風だが、Eの口は同じ動作をただ繰り返していて、文字通りパクパクしていたんだ。

それは見ていたFも同じ考えだったと思う。

そして双眼鏡に映る女は、この世の物じゃないという答えに行きつくのは自然の流れだった。

俺「おい!Eがやべーぞ!」

F「行こう!!!」

二人は「E~!」と名前を叫びながら走って彼の元へと走った。

走っている最中、気付けば女の姿は見えなくなっていた。

F「おいE!大丈夫かお前!」

FがEの肩を掴んでゆするが、Eはボーッとしたまま地面を見つめて口をパクパクと動かしている。

あきらかにEの様子がおかしい。

そうしてこのまま登山を続けるのは無理だという事になり、俺たち三人は下山する事となった。

その道中、Eは肩を支えられて歩く事は出来るものの、力がなくずっとボーッとしていた。

やがて山をおり、休憩所に入る頃にEは急に正気を取り戻した。

E「あれ?なんでここにいるの?」

彼は直近の記憶が一切ないらしい。

そして女の姿を見たのは俺とFだけだった。

これは実話なので、その後Eの身になにか起きたという事は無く、オチもない。(盛り上げる為に少し話を盛ろうかとも思ったが、ありのままを書きました)

たまに「あの時の記憶って実は俺の勘違いだったんじゃないか?」って思う時がある。

最近Fと合う機会があり、俺は10年振りにあの時の話をFに持ち掛けた。自分の記憶違いじゃないよな?っと。

するとFはギロっとこっちを睨んで、まっすぐ私の顔を見ながら口をパクパクと動かし始めた。

俺「えっ?」

F「ハハハハハ。冗談だよ冗談笑」

あれは私の記憶違いではないという確認には、それだけで十分だった。

 

 



洒落怖くん洒落怖くん

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