【実際にあった怖い話】短編#004|先祖代々続く呪い

とある田舎にある集落にまつわる呪いの話をしようと思う。これは俺の先祖から伝わる呪いで、実話である。

俺の苗字は森次(もりつぐ)と言います。自分で言うのもなんですが、同じ苗字の人を今まで一人も見た事がないのでそこそこ珍しい方の苗字かもしれません。

 

俺の実家は北海道でかなり田舎の集落にあります。そして集落ってちょっと不思議で、どこの集落も一緒かはわかりませんが、俺の実家の集落は同じ苗字の人がとても多いんです。

同じ苗字の人たちは大体近所に家がありました。そこまで極端ではないのですが、ちょっと大げさに言えば苗字毎に住む地域が分けられている、そんなイメージと言っても過言ではないかもしれません。

そして何パターンかの苗字の人たちに分けられていたのですが、森次という苗字はその集落でも俺の親族だけでした。

当時は周りに自分と同じ苗字の人がいないからなんか特別感があり、森次と呼ばれることに結構優越感も感じていました。

 

そうして俺が中学に上がった時、その日は家族で同じ集落に住むおばあちゃんの家に遊びに行く事になりました。(おばあちゃんも苗字は森次です。)

ド田舎なので特にやる事もなく、おじいちゃんおばあちゃんと一緒にボケーっとテレビを見ていたら、その時テレビでは「苗字の由来特集」みたいな番組が放送されていました。

例えば鹿川(かがわ)は江戸時代にその土地では鹿が良く獲れ、大きくて綺麗な川があったからその地にちなんで鹿川とか、うるおぼえですがそんな感じの番組です。

そうして見ていたら、そういえば森次ってこの集落でだれもいないよな?って思い、隣にいたおばあちゃんに何気なく「森次って苗字の由来なんだろうねぇ~」って聞きました。すると祖父母は一気に顔色がこわばり、それぞれお互いに視線を合わせたまま固まりました。

 

俺はなんか聞いちゃいけなかったのかな?っと思ってその祖父母を見て凄く気まずくなったのですが、少ししておばあちゃんが「これはお前にとって深く関係のある話だからな・・・」っと言い出しました。

するとおじいちゃんは急に大きな声をあげて強く「やめておきなさい!」っと言い出し、俺は体が見事に動くくらいビクッっと驚きました。

おばあちゃんはそうおじいちゃんに言われた後、「この子は知っておかなければいけない。このまま知らないで先代達のようになったらこの子は報われない」っと言い出し、俺は一気に怖くなりました。

するとおじいちゃんもおばあちゃんの言う事に諭(さと)させられるように「うむ・・・・」っと小さくうなずくかのように下を向き、その後しばらく顔を上げる事はありませんでした。

そしておばあちゃんは俺にこのように語り始めました。

 

これはこの集落に代々伝わる話で、ここにいる全員を含めた家系のご先祖様達の話なんだ。

大昔この土地ではまだ苗字もまともにない頃。

この集落ではなんとか作物を育て、その量はギリギリ人々が生きていけるくらいだった。豊作に恵まれる事は無かったが、それでもなんとかみんな生きていけるくらいの量は確保できていたんだ。

そんな中ある年に今までにないくらいの凶作が続き、満足に食べ物にありつけない人々が増え、餓死する人も増えていったんだ。

このままではどんどんと人が亡くなっていってしまう。そう考えた集落の人たちは遠い所から祈祷師(きとうし)を呼び、なんとか豊作に恵まれるよう集落でお祓いをお願いする事にしたそうだ。

そうして招いた祈祷師は集落に着いてから、人々にこう言ったそうだ。

「この集落で豊作を望むのなら、この土地の神様に生贄をささげる必要がある。その生贄は、これからこの集落で一番初めに生まれた長男を生贄にしなくてはならない。」っと。

 

そして集落の人々は祈祷師に連れられ近くの小山に良き、その頂上にある木を指さして祈祷師はこういったんだ。

「あの山の頂上にある一番高い木に、これから生まれてくるその長男の首と手足を切断した胴体をくくりつけなさい。

そしてその首は足元の土の中へ。四肢はその木を囲むように4か所に埋めなさい。儀式は一度行うとその血筋の人間は代々続けなくてはならない。」っと。

そうしてそんな出来事があった後、俺のご先祖様にあたる夫婦にその後集落初めての長男が生まれたそうなんだ。

 

もちろんご先祖様夫婦は生贄に出す事に強く反対したが、集落では相変わらず凶作が続き、毎日のように人々が餓死していている状況は続いていた。

毎日毎日集落の人々に説得され、ご先祖様夫婦はその祈祷師の言う通り生まれたばかりの長男を生贄としてささげだす事にしたそうだ。

その後すぐには豊作になったという訳ではないのだが、翌年から状況は変わり、なんとか人々が食べていけるだけの作物は収穫出来るようになったそうだ。

その後そのご先祖様夫婦には次男三男とどんどんと子供が生まれたのだが、みんな健康に何不自由なく暮らせた。家系はその後も途絶えることなく、その儀式は何代かに渡って続けられた。

そうして何代か続いた後、「もうその儀式はやらない」と強く強く反発するご先祖様がいた。

 

集落の人たちは昔のように凶作が続き餓死する人達が現れるのを恐れ、説得を試みたが、今まで犠牲になってきてもらった事もあり心の中ではやましさもあったのか、最終的にその代からは儀式をもうやらないという事になったそうだ。

その代わりに新たに祈祷師を呼び、お祓いを受ける事となった。

その内集落にやってきた祈祷師は、小山の頂上にある木の前に立った後、町の人たちに向かってこう言ったそうだ。

「この大昔から続いている儀式の呪いは解く事は出来ない。もしお祓いが上手く行って呪いが解けたとしても、これまで犠牲になって来た長男達の怨念は残り続け、それが原因でその家系には不幸が訪れる」っと。

 

そうして祈祷師にお祓いをしてもらい、集落の人々はその生贄を捧げていた木を切り落としてしまったんだ。その後はどうなったのかと言うと、儀式を辞めてからも集落では凶作に見舞われる事は無かったそうだ。

しかし儀式を行わなかったその代の長男は、生まれてから少しも経たず病で亡くなってしまったそうだ。

それからというもの、その後何代にも渡り長男は死産だったり、若くして早々になくなったりという事が一切例外なく続いた。

苗字の由来はね、集落の人たちが苗字を名乗るようになった頃、おばあちゃんたちの家系は特別な家系だから森次という名前になったんだ。

今まで行ってきた儀式・犠牲となった長男達を忘れないように、小山の頂上の木の上に生贄を捧げたから「森」。

次男以降は何不自由なく暮らせるように、そしてその家系に集落の人々は感謝の気持ちを忘れないという事から苗字は森次になったと、おばあちゃんもおばあちゃんのお母さんから昔教えてもらったの。

それでね、実はおばあちゃんにも長男となる兄がいたんだけどね、まだ小さい時に事故にあって亡くなってしまったんだよ。

ここまで話し終わると、ずっと我慢してきたのかおばあちゃんの目からは涙があふれ、おじいちゃんはそっっとおばあちゃんを片手で抱き寄せた。

俺は長男。今年齢は22才だけどまだ生きている。

そしてその話を聞いてからは、定期的にご先祖様のお墓に手を合わせるようにしている。

この先どうなるかは分からないけど、ご先祖様への感謝の気持ちだけは忘れないように心がけている。



洒落怖くん洒落怖くん

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