【面白いけどちょっと怖い不思議な話】廃病院の解体工事

私は建物の解体工事をする会社に勤めております。

ここではそんな解体工事現場で体験した、ちょっと怖くて不思議な話をしたいと思います。

(これまでに何度も不思議な体験をしているのですが、とある二つの現場だけは一生忘れられない出来事でした。)

まず最初に、ウチの会社がどういう会社かという説明を簡単にさせてください。

ウチの会社は、基本的に外国人労働者が全体の8割を占める会社です。(私は日本人です)

国籍は様々ですが、一番多いのがベトナム人。後はインドネシアやフィリピン・ミャンマーやタイの人達も沢山働いています。

 

大体の労働者はわずかながらの片言の日本語でこっちに働きに来ています。

そして働きながら日本語を覚えていくのですが、最初はほとんどが会話になりません。

会社内はいくつかのグループに分かれており、決まってそのグループの頭、主任的立場の人間は日本人です。

そして外国人労働者でも、日本語がほんとある程度ですが意志疎通できる程度の会話が出来て、母国語・英語が喋れる外国人労働者は立場的に副主任に選ばれたりします。

私は主任的立場で、副主任はベトナム人の「チャン」という青年でした。

私たちはいつも一緒で、会社に入ったばかりで日本語がほとんど話せない外国人と私の通訳代わりにもチャンは沢山貢献してくれていました。

そしてウチの会社は解体工事をメインにしているのですが、日本人だと平均年収は1000万円を超えます。(主任はもっと上)

 

これは何も外国人労働者から搾取しているとかそういうのではなく、きちんとした対価として頂いているお給料です。

人によっては「解体業者で年収1000万~もいくわけないでしょ」って思われるかもしれませんが、これにはきちんとした理由があります。

なぜならウチの会社は、何処の会社もお手上げ状態の現場を専門に解体しているからなんです。

どうして同業他社が投げ出す現場があるのかと言うと、曰くつきの現場、ハッキリ言うと「出る現場」だからです。

本当にそういう現場って日本各地に存在するんです。

よくあるじゃないですか。建設工事の段階で労働者が多数亡くなったり、事故が多発して開発途中で断念するような話。

 

あれの逆バージョンで、解体出来ないほどの心霊現象・事故・その他もろもろの曰くつき現場も多数存在するんです。

そしてそんな現場ですから、日本人を雇って解体工事をしても、みんなすぐ辞めちゃうから出来ないんです。仕事にならないんです。

だからウチの会社は8割以上が外国人労働者という訳なんです。

これをあくどい会社だと思うでしょうか。

でも、誰かがやらないといけない仕事ってあるんです。

前置きが長くなってしまいましたが、ここからは私(名前は仮名で中本とします)と、副主任でベトナム人のチャンと一緒に体験した二つの体験談を書いていきたいと思います。

某県の廃病院の解体

私たちは前途しました通り、曰くつきの建物専門の解体業者です。

日本国内でも非常に数が少ない会社なので、仕事自体に困る事はありません。

ただ一つ不満といいますか、あるとすれば基本的に出張がほとんどという所です。

日本全国とまではいかなくても、基本的にどこでも出張に行きます。

その時も私とチャンを含め、残り6人の外国人労働者を連れて合計8人で解体工事の出張に某県に来ていました。

チャンは副主任で当時2年目だったのである程度は察していた頃ですが、基本的に外国人労働者には、当社は曰くつき物件専門の解体業者というのは伏せています。

伝えていません。

最初の頃は伝えていたんです。

しかし彼らも事情がありますから、伝えた所でそれを理由で断る人は一人もいなかったんです。

ですから変に恐怖心を煽る事に繋がっていた部分もあった為、今では一切伝えないようにしています。

 

その時の解体現場は廃病院。

曰くつき物件専門の解体業者なら、廃病院なんて年に数回は経験するので私は慣れていました。

チャン「ナカモト。ここなんだか暗いね。日の光が全然ハイラナイヨ」

私「外は明るいのに、建物内は全然光が入らないんだなぁ」

洒落にならない曰くつき物件というのは、大抵の人は「何となく雰囲気がちょっとおかしい、なんか怖い」って感じる物です。

この時は仕事自体に慣れて来ていたとはいえ、チャンも少し怖がっている雰囲気でした。

初日は出張で現地について時間も中途半端だったので下見だけ。

 

工事は二日目から始まりました。

作業が始まると現場にはピリついた空気が流れます。

外国人労働者は日本人とは気質が違いますから、とにかくなんでも楽しもうという空気を出して作業をする傾向にあります。

いわゆるお喋りとかもそうですね。

私は仕事は仕事という典型的な日本人なので、作業中に怒鳴るのはよくある事でした。

さらに作業に集中する事で、今自分がいる物件は本当にヤバイ所という考えも出ないようにという思いもあったんです。

 

そうしてみんな作業をしていると、外国人労働者の内の一人の顔色がおかしい事に気が付きました。

私「おいファム(外国人労働者の名前)。大丈夫か?顔色が悪いぞ」

ファム「ナカモト。アムイ。アムイ。」(彼は寒いと言っています。慣れると何となく意味が分かるようになります)

ファムの顔色が本当に悪いので、彼は休憩を取らせて残った7人で作業を進め、その日は何事もなく作業が終わりました。

 

仕事が終わった後の夕食時はみんなで一緒に食べるのですが、ファムはどうやら元気を取り戻したようでした。

私「ファム。明日は大丈夫か?」

ファム「ウン。デキル。」

あんまり悪いようだったら無理はさせられないので休ませるつもりでしたが、彼らも稼ぎに来ています。

なによりファムの顔色も良くなっているので次の日は働いてもらう事にしました。

 

翌日。

解体工事を初めて1時間くらい経った頃でしょうか。

私はまたファムの顔色が物凄く悪くなっている事に気付きました。

私「おいファム!大丈夫かお前!」

ファム「ここ、アムイね。」

昨日よりも顔色が悪く、さらに彼は寒いと訴えているのに脂汗を垂らしています。

私「ファム。休むか?」

ファム「ダイジョウブ。ワタシ、オク、ヤッテクル」

そう言ってファムは一人、奥の部屋(元は病室)の作業に向かいました。

 

そこから僅か10分位でしょうか。

今行ったばかりのファムが叫び声を上げながら、遠く離れた奥の部屋からこっちに向かって走って来たのです。

途中転んでも一瞬で起き上がり、死に物狂いで走ってこっちに向かってきています。

 

私「おいファム!どうした!?」

大声で声をかけると、ファムは必死に走りながら大きな声で母国語で何かを叫んでいます。

私「チャン!ファムはなんて言ってるんだ!?」

そういうとチャンはファムの元に駆け寄り、必死に聞き取ろうとしています。

 

しかしファムはなぜかその時、言葉が通じるチャンの制止を振りほどき、目を思いっきり見開いた状態で脂汗を垂らしながら、私に向かってこう言って来たのです。

 

 

 

ファム「ナカモトッ!ゴースト!!ゴ・ゴースト!!!」

 

これはさすがに私にも理解が出来ました。

彼はハッキリと幽霊を見たのでしょう。

ファムは今自分が出て来た奥にある部屋の方を指さし、私に向かって必死に伝えてきています。

ファム「ゴースト!ゴースト・・・・・・イ・イマス!」

 

昨日の今日でファムの顔色がずっと悪かった事。

何よりここは同業他社が投げ出す誰も手を付けない曰くつきの廃病院。

こんなファムの様子を見て、他の外国人労働者も怯え出すと仕事になりません。

なので私とチャンは優しくファムをなだめました。

私「ファム?ゴースト、ノー。」

 

しかしファムはパニック状態にあり、目の焦点が少し合っておりません。

ファム「イマス!イマス!dangerous!」

脂汗を垂らしながら部屋を指さして尚私に訴えてきます。

 

やがてなんとかファムを落ち着かせ、その後ファムを一人で部屋に帰して私達は作業を続けました。

 

その日の仕事終わりにファムと合流すると、彼は仕事を辞めると言い出しました。無理もありません。私も慣れっ子です。

ファムが脱落した後、何度かその現場では不思議な出来事がありました。

電気が通っていない電球が突然パンッ!っと音を立てて破裂したり、機械の故障も1度や2度ではありません。

それでも現場慣れしている私からすればまだまだ許容範囲。

 

ファムのあの時の様子や発言を他の外国人労働者も聞いていたので、彼らの顔も時折こわばって引きつっていました。

たまに外国人労働者の一人が、必死にチャンに何かを伝えている時もありました。

彼の顔を見れば、チャンに何を伝えようとしているのか位は察しました。私は慣れっこなので。

私「ノープログレム。」

廃病院の地下で見たこの世の裏側

これは正直ここで書くかどうか本当に迷いました。

なぜなら、この話を聞いて信じる人は一人もいないと確信しているからです。

逆に私が誰かからこの話を聞いても100%信じません。

批判されるのは嫌いなので、これは私の作り話という体でお話いたします。

その時も解体現場は廃病院でした。(曰くつきの解体現場でも廃病院はほんと多いんです・・・)

ある日、来週から某県の病院解体工事が決まったと社長から伝えられました。

社長は基本的には現場には一切出る事がありません。

しかし何故かその時だけは社長も一緒に来るとの事でした。

 

事前に病院のサイズなども確認していますが、どう考えても人手が足りていないという訳ではない。外国人労働者は沢山いる。

なのに何故社長は来るんだろうって最初は不思議でした。

そして当日。

またいつものように初日は下見だけという流れで、私と副主任のチャンと社長の三人は現場を下見する事にしました。

廃病院といってもそこまで大規模なサイズではありません。

中に入ると、廃病院では嫌な雰囲気をよく感じ取る事があるのですが、そこは特に何も感じません。

それはチャンも一緒のようでした。

チャン「ナカモト。ここはイージーね!」

私「チャン、調子乗るなよ。」

 

そこの廃病院は地下もあるので、社長と離れて私とチャンは地下を見に行きました。

地下に通じる道は一つで、狭い階段を下りた先にあります。

その階段を降りると、電気は通っていないので辺りは真っ暗。

業務用の強い懐中電灯で照らしてみると、そこには病院の面積では信じられない程広い空間が広がっていました。

チャン「コレ、上より広い?」

明らかに病院の面積よりも広い地下です。

そして先に進んでいくと廊下の左右にいくつもの部屋があるのですが、信じられない事に何故かその扉は全て鉄格子でした。

チャン「アレ?ココ病院じゃないの?」

チャンがそう言うのも無理はありません。私も同じ事を思いました。

 

病院なのに鉄格子。これじゃまるで刑務所じゃないかというのが素直な感想です。

私達はさらに奥へ進みました。

チャン「あれ?今なんか聞こえなかった?」

そういうとチャンは後ろを振り返り、今通り過ぎた鉄格子の部屋の前に戻りました。

懐中電灯はその時私しか持っていなかったので、真っ暗な鉄格子の前に立ったチャンは部屋の中をまじまじと見つめています。

チャン「ナカモト。ここ照らしてみて」

そう言われたので私も部屋の前に行き、部屋の中を照らしました。

 

すると部屋の中にはもう一つ、縦横サイズが1mちょっとの鉄格子がありました。

そして鉄格子の中から、信じられない事に、人間のような姿をした生物がこっちを見つめていました。

 

 

例えるなら、ロードオブザリングに出てくるゴラムの姿形にそっくりなんです。

 

ここは廃病院です。人なんている筈がありません。

目の前の光景に驚き、チャンだけじゃなく私も一緒に大きく叫び、瞬時にその場から逃げ出しました。

そして上の階にいた社長に今起きた事、地下に何があったのかをそのまま伝えました。

 

私はこの仕事ではベテランです。どんな現場でもこなしてきました。それは社長もよく知っています。

 

そして私から説明を受けた社長は、こう言いました。

社長「やっぱり断るか。ウチでも無理だな。」

 

そういうと社長はそれ以上何を聞いても答えてくれず、「わりぃ、今回だけは勘弁してくれ」っとしか言ってくれません。

 

社長は普段現場に顔を出す事がないのに、その時だけはついてきた事を考えると、きっと何か知っていたのでしょう。

この話は今でもたまにチャンと話しますが、決して見間違いではありません。



洒落怖くん洒落怖くん

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