【ゾッとする怖い話】フランス人形

私は子供時代、大好きだった爺ちゃん婆ちゃんの家に良く遊びに行っていた。

自分の住んでいる家から徒歩5分くらいの所にあるので、いつも気軽に遊びに行っていた。

爺ちゃんも婆ちゃんもとてもやさしく、私に対して怒るなんて事は一切無くいつも笑顔で優しく接してくれた。

そんな婆ちゃんの家には一つの和室があり、何処の家庭にでもあるような古いタンスがあった。

そしてそのタンスの上にはガラスケースに入った、とても古そうに見えるフランス人形が置かれていた。

これは今でもハッキリと記憶にあるのだが、そのフランス人形の話題になると、いつも爺ちゃんは怪訝そうな顔をしていた。

さっきまで3人で遊んでいたのに、そのフランス人形の話題になると爺ちゃんは露骨に近寄らなかった。

子供だったのでその時は特に気にも止めていなかったが、私と婆ちゃんがその古いフランス人形で遊んだり、人形の話をしている時はいつもそうだった。

婆ちゃんはそのフランス人形をとても大事にしているというのは、子供の私でも分かった。

フランス人形を抱える時は、まるで大事な孫を抱えるかのように優しく持っていたからだ。

 

そしてそれから月日が流れ、私が16歳になった頃、最近訪れていなかった婆ちゃんの家に一人で遊びに行った時の事です。

いつもはいるのに、その日は爺ちゃんも婆ちゃんもカギを開けたまま留守にしていました。

「その内帰ってくるかな?」

そう思い私は居間でくつろぐことにしました。

そこから2時間くらい経った頃でしょうか。一向に帰ってくる気配がなく、ヒマを持て余した私はなんとなく隣の和室に入った時、一つの異変に気が付いた。

それは、子供の頃から必ずタンスの上にあったフランス人形が、ガラスケースだけがおいてあり中身が入っていなかったんです。

「あれだけ大事にしていた婆ちゃんが、フランス人形をどこにやったんだろう?」

そう思った時、ちょうど爺ちゃんと婆ちゃんが帰って来ました。

私はすぐにフランス人形はどうしたのかと聞くと、婆ちゃんは文字通りその場で固まった。

そして爺ちゃんは一瞬の内に、顔が見た事も無いほど怒りに満ち、鬼のような形相で婆さんに向かってこう怒鳴りつけました。

「だから言ったんだ!あれは焼かないとダメだ!!あれほど言ったのに!」

怒った姿の爺ちゃんを見た事はこれまで一度も無く、その変わりように私も驚き固まってしまった。

爺ちゃんに怒鳴りつけられた婆ちゃんは下を向き、何も言葉を発しない。本当にただただ下を向いていた。

そしてすぐに爺ちゃんは「探してくる」と言って玄関を飛び出していった。

 

私は状況が飲み込めていない中、「探してくる」という言葉に強く違和感を覚えた。

(探してくる?誰かが持って行ったの?泥棒?)

少しして私が婆ちゃんに「人形どうしちゃったの?」っと聞くと、婆ちゃんはいつもの笑顔に戻り、「お前は気にしなくて良いよ」っと話を濁された。

 

爺ちゃんがしばらく帰ってこないまま夜になったので、その日はそのまま婆ちゃんの家で寝る事にした。

そして深夜0時くらいだろうか。

私も婆ちゃんも寝ていた時、ガラガラっと玄関が開く音が聞こえた。

「爺ちゃんが帰って来た」

そう思った瞬間、突然驚くほど大きな声で「うわぁぁぁ!」っと玄関の方から爺ちゃんの叫び声が聞こえて来た。

急いで婆ちゃんと二人で玄関に行くと、そこには婆ちゃんのフランス人形が玄関の地面に置かれ、それを見下ろす爺ちゃんの姿があった。

あのシーンは今でも目に焼き付いている。

フランス人形はどういう経緯かは分からないが爺ちゃんが持ってきた物ではなく、気付いたら玄関に置かれていたという事を、その光景を見た私は一瞬で理解した。

爺ちゃんの驚きようとその場を見た人間なら全員が同じ事を思っただろう。

 

爺ちゃんは力強い腕でフランス人形の髪を鷲掴みにして持ち上げた時、婆ちゃんはまるでフランス人形をかばうかのように両の手を一瞬前に出した。

しかしそんな婆ちゃんを気にも止めず、爺ちゃんは怒りの形相で婆ちゃんに向かってこう叫んだ。

「もうダメだ!コレは寺に持っていく!お前もこれで分かっただろ!」

そう言ってフランス人形の髪を掴んだまま爺ちゃんはまた出て行ってしまった。

私は「今夜中だけど、どうして今なんだ?お寺やってるのかな?」そう思ったのを覚えている。

婆ちゃんはその場でしゃがみ込み、泣いている。

その場で婆ちゃんをなだめ、夜中を過ぎていたので二人はまた眠る事にした。

 

次の日の朝。

目が覚めた私は玄関の隣にあるトイレに行こうとした時、そこで信じられない物を目にした。

玄関の地面には、昨日爺ちゃんが持って行った筈のフランス人形が置かれていたからだ。

だがフランス人形は昨日と違い、泥だらけになっていた。

私は怖くなり、大きな声で婆ちゃんを呼ぶとすぐに婆ちゃんが玄関にきて、フランス人形を見るなり早々すぐに人形を抱きかかえた。

婆ちゃん「良かった~。ホント良かった~」

その姿を見た私は少し違和感を覚えた。

爺ちゃんはまだ帰ってきてないからだ。

お寺に問い合わせても爺ちゃんは来ていないとの事だった。

そしてその日以来、爺ちゃんは二度と家に帰ってくる事は無く、10年経った今でも行方不明のままです。

後日婆ちゃんの人形について母親に聞いた事があったが、母親も詳しい事は知らないようだった。

自分が生まれた時からあの人形は存在していて、昔から婆ちゃんがとても大事にしているという事だけ。

爺ちゃんはあの日、人形を持って確かにお寺に向かったのだが、どうして人形だけが帰って来たんだろう。

爺ちゃんはお寺に行ったんじゃなかったのか?

謎が多いですが、”帰ってきた”フランス人形が泥まみれだった事を考えると、悪い想像しか出来ないのでこの話は出来るだけ思い出さないようにしています。



洒落怖くん洒落怖くん

このお話が気に入ったらsnsで誰かに誰かに教えてあげよう。↓