恐怖体験|本当にやばい物は猫でも分かる

私はダイビングが趣味でよく仲間と海に潜っていたのですが、ここでする怖い話はそのダイビング仲間との間に起こった恐怖体験です。

普段ダイビングは主に私を含めたHとCの三人で行っていました。

独身なのは私だけで、HとCはそれぞれ結婚して子供もいました。

その日も3人でダイビングを楽しみ、夜はお酒を飲んで他愛もない会話で盛り上がっていた時、急にHがおかしな事を言い出しました。

H「なぁ、俺さ、遺書を残しておこうと思うんだよね。」

急にそんな事を言われ驚いた私とCは、Hが何か悩んでいるのかなどを聞きましたが、彼は一切そういう事は無いと言いました。

H「いやさ、ダイビングでの事故死とかってたまにあるじゃん?もしさ、俺が事故に遭ったらと思うと、家族には遺書位は残して置いていいんじゃないかってさ。純粋にそう思っただけでホントなんもないよ!」

H「それでさ、遺書は紙に書くんじゃなくて、映像としてビデオにメッセージを残したいんだよね」

そういう事なら特段悪い事でもないし、私とCもしぶしぶ納得しました。

今の若い人なら知らないかもしれませんが、当時はVHSと言って長方形のビデオテープが主流だったんです。

撮影するホームカメラは当時結構高価な物でして、Cだけが撮影機材を持っていたので、後日三人で集まってHの遺書代わりのビデオ撮影をすることになりました。

H「今これを見ているという事は、私はもうこの世にいないという事になります。〇〇(奥さんの名前)、△△(娘の名前)。お前たちを残してこの世を去る事になるなんて、お父さんは本当に悲しいです。

でも泣かないで下さい。お父さんはいつも家族の事を思っています。いつも見守っています。」

このように特別変わった所はなく、残された家族へのメッセージという、遺書代わりの撮影は10分程度で終わりました。

 

そしてそれから1ケ月ほど経ってからでしょうか。Hが別の友人と行ったダイビングで事故に遭い、そのまま亡くなってしまいました。

私もCもお葬式に参列したのですが、お葬式はそれはもう悲惨な物で、まだ若い奥さんと小さな娘さん、ご親族の方はずっと泣き崩れていました。

 

まさかこんな事になるなんて・・・

誰もがそう悲しみに暮れていました。

そして皆で食事の席の時、私はHが生前に撮影した遺書代わりのビデオテープの事を皆に話しました。

Hは予め何か予感していたのかもしれない。心の中では皆そう思っていたと思います。

突然遺書を作るなんて言ってからたった1ケ月で事故に遭うなんて、普通じゃ考えられません。

しかしそれを誰も口にする事はなく、皆でその遺書のビデオテープを見る事になりました。

 

テープをセットし、再生ボタンを押すと、そこには椅子に座って真っ直ぐとこちらを見つめているHの姿がありました。

映像は乱れており、しょっちゅう「ザッ・・ザッザッ」っと一瞬画面が乱れます。

VHSよりもさらに昔のテープでは珍しい事では無いのですが、VHSの時代ではそういった現象もだいぶ軽減されているので、見ている時に私とCは少しおかしいなと感じていました。

どうしてこんなに映像が乱れているんだろう。そう不思議に思いながらも皆と一緒に画面を見つめていました。

H「今これを見ている ザッザッ いう事は、私 ザッ もうこザッの世にい ザザザッ 事にザザッます。

〇〇(奥さんの名前)、△△(娘の名前)。」(名前の所はほとんど聞こえない)

 

明らかに様子がおかしい。テープは普通に引き出しの中にしまっていて、撮影してから取り出したり再生したりした事はなかった。

もちろん新品のテープを使用したし、なにより撮影してから1ケ月しか経っていない。

そして続けて画面を見ていると、映像の中のHの顔は、徐々に徐々にボヤけていっているのにも皆が気付き始めた。

いや、正確に言えば、信じられない事だがHの顔は徐々に徐々に原型をとどめなくなってきたように感じたが、私はある事に気づいた時、本当に何かがおかしいと感じて冷や汗が止まらなかった。

Hの顔は、ボヤけているのではなく、徐々に別の人間の顔になっていっているのだ。

 

H「お前たちを残し ザザッ てこの世を去るザザッ事になるザーーーさんは本ザーーーーー。

でも泣かないで下さい。お父さんはいつもザーーーーーーーーーーーーーーーーーー。」

 

もうここまでくるとHの顔はまったく別の人間の顔になっており、それを見ている親族はみな顔面蒼白状態になっている。

皆が真剣に画面を見つめる中、こんな状況では何も言う事は出来ずに私とCはただ見守る事しか出来なかった。

 

H「それじゃ ザー 。ザー で待ってるね」

 

H、いやHと思われる画面に映る人が最後にそういった時、急に画面いっぱいに現れた10数本の腕が彼を包み込み、腕・足・首・頭それぞれを鷲掴みにして彼をそのまま一瞬で画面の外に引っ張って行き、そこでテープは終わった。

そのビデオテープが終わった瞬間、怒り狂ったHの父親に私は怒鳴りつけられ思いっきり殴られた。

私がイタズラでこのテープを皆に見せていると思ったのだろう。

奥さんや娘さん、その他親族の方たちはさらに泣き崩れている。

Cが必死にHの父親を止め、私たちがイタズラでこんな事をしていない事や、今この場でこんな風にテープがおかしくなっていた事に気付いた事。

Hと三人で真面目に遺書のテープを撮影していた事を必死に伝えたが、Hの父親はそれでも尚怒り狂っていた。

とても収集が付かない状態だったため、私とCはそのビデオテープを持って逃げるようにその場を後にした。

 

帰りの車の中、私とCはずっと無言だった。

 

とてもじゃないけど、今さっき起きた事態を消化出来る様な状態ではなかった。それだけテープの内容は悲惨でおぞましかった。

 

翌日、Cに電話をして、近所のお寺に例のビデオテープをお払いしに行こうという事になった。

大きめの紙袋にそのテープを入れ、事前に連絡していたお寺に入ろうとした時、突然住職が現れ、私とCに向かって無表情かつ冷静にこう言い放った。

住職「それはウチでは無理です。」

まだ中身も見せていない、ただ寺の中に入ろうとしただけなのにそう言われ、あまりにも不意を突かれたので二人はただただ唖然とした。

C「ちょっとまってください。じゃ、じゃぁこれはどうすればいいんですか・・・」

Cが口を開いていなければ、私も全く同じセリフを口にしていたと思う。

そのまま住職は知人と思われる霊媒師の方の住所と、簡単な地図を書いて私達に渡してくれた。

住職「ここならなんとかしれくれるかもしれません。」

私とCは渡された簡単な地図を手に、早速そこへ向かった。

到着するとそこは古い家で、家の周りには沢山の木が生い茂っていた。

玄関の大半は木に囲まれていて、一切手入れがされていない様にも見えた。

さらに入口付近には沢山の猫がいたのだが、私達が近づくと猫たちは一斉にどこかへ散っていった。

インターホンを鳴らすと年配の女性の声がした。

「中へ入ってください」

言われるがまま玄関に入ると、目の前には10匹ほどの猫と年配の女性が立っていた。

私とCが玄関の敷居をまたいだ瞬間、猫たちはまるで親の仇でも見たのかってくらい激しく威嚇してきた。

年配の女性に連れられ、奥の部屋に入り椅子に腰を掛けた時、年配の女性からこう話しかけてきた。

年配の女性「私がどうしてこんなに沢山猫を飼っているか、わかりますか?」

私「いえ、わかりません。」

年配の女性「猫はね、危険な存在を教えてくれるの。」

私とC「・・・・」

年配の女性「あなた達、とんでもない物を持って来たわね。猫がここまで強く反応するのを見るのは私も初めてよ。」

そう言うと年配の女性は、テープが入った紙袋を私から無造作に取り上げ、こう言い放った。

年配の女性「もう帰っていいわよ。そしてこの事は忘れなさい。あなた達がどうこう考えても意味が無いの。忘れるのが一番。お友達は可愛そうだったね」

私とCはHの事なんて一切話していない。袋の中身の事はおろか、軽い挨拶程度の一言二言しか口を開いていない。

その事実を認識した時、本当にこういう世界ってあるんだとその時に確信した。

 

それからはCとも疎遠になり、私は趣味のダイビングも気付けばあれ以来一度も行っていなかった。

そしてその出来事から2年ほどたったある日、突然Cから電話がかかってきた。

電話に出るとCは凄い明るい声で「よぉ!久しぶり!元気してたか!」って話しかけてきた。

私もCとは久々だから、電話がかかってきた事が嬉しかった。

Cは近いうちに飲みにいこうと言い出したので、ことわる理由はないからCと飲みに行く事になった。

後日居酒屋でCと話していると、Cは突然こう言いだした。

C「俺さ、あれからまだ今でも潜ってるんだよね。」

私「そうなのか!おれは忙しい事もあってサッパリだな」

C「んでさ、頼みたいことがあるんだけどさ」

私「ん?どうした急に?金なら貸さんぞ!」

この時、Cはあの時のHとまったく同じセリフを口にし、私の体は文字通り凍り付いた。

 

C「いやさ、ダイビングでの事故死とかってたまにあるじゃん?もしさ、俺が事故に遭ったらと思うと、家族には遺書位は残して置いていいんじゃないかってさ。純粋にそう思っただけでホントなんもないよ!」

 

この3ケ月後にCは事故に遭って亡くなった。



洒落怖くん洒落怖くん

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